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福島家庭裁判所 昭和37年(家)797号 審判 1962年2月22日

申立人 大谷太郎(仮名)

相手方 安田キヌ(仮名)

要扶養者 大谷哲男(仮名) (昭和二二年一一月八日生)

大谷実(仮名) (昭和二四年一二月二一日生)

大谷良子(仮名) (昭和二七年一二月一七日生)

安田笑子(仮名) (昭和三一年七月一三日生)

主文

要扶養者に対する扶養義務の分担については、当事者双方は当分の間それぞれ同居している子の全扶養義務を負担すること。

理由

一、申立人と相手方は昭和三十六年十一月二十九日長男、二男、長女の親権者を申立人、二女の親権者を相手方と定めて調停離婚し、それぞれ親権に服する子と同居している。

一、離婚原因については申立人に情婦ができたことが主な理由であつたので慰謝料、財産分与として申立人は相手方に金三〇万円を一時金一〇万円残金二〇万円については一万円月賦の割で支払うことに定めた。

一、子の養育費の分担については前記財産分与もあつたので右の調停手続では特に定めずただ別に養育費の取りきめができる旨明約したが、当分の間はそれぞれ自己の膝下にある子を育てることを予定した。

一、勿論相手方には資産、職業があるわけでないが、実家が農家なので一応親の援助をうけることに期待し、申立人についても当人は身体虚弱で定収もなかつたが、その実父が相当の商家であるのでこれ亦、その援助をうけることを期待したものであつた。

一、ところが申立人は前記調停成立後一ヵ月も経過せぬうちに自己の病弱無収入を事由に相手方に対して自己の親権監護下にある子三人分についても相手方に対して毎月五千円宛の養育費の分担を求めるため本件申立をしたものであるが特に前記調停成立後現在迄の間に事情の変更がなく且申立人の扶養可能状況は当時の調停において十分斟酌されているところであるから、申立人の月々五千円を求める申立は相当でない。

これに対して相手方は、相手方こそ申立人ならびにその父親に自己の監護下にある子の扶養義務の負担を求める資格があるが、前記調停成立後からの事情変更のある日を期待していると云うのである。それに申立人が子三人の扶養が困難であれば元来相手方が子二人宛を分けて離婚することを申出たのに対して、申立人がそれに応じないので己むなく子一人の引取りで我慢したのであるからこの際喜んで二男の引取扶養に応じたいというのである。

これに対して申立人側は首肯するに足る理由なく子の引渡はできないとするのであるから、その犠牲は仮りにあつたとしてもそれは自己が負担すべきである。

右の事情であるから申立人の要求するところは理由がなく、相手方は現状維持の外、特に申立をするところがなく、且現状の儘が己むを得ないところであるから主文のとおり審判する。

(家事審判官 村崎満)

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